東京を代表する繁華街であり、若者文化の発信地としても知られる渋谷。その中心に位置する渋谷駅は、日本でも有数のにぎわいを誇る駅のひとつです。
今でこそ連日多くの人が行き交う渋谷駅ですが、約140年前の開業当初はまったく異なる顔を持っていました。
時代とともに大きく変化し続ける渋谷駅とその周辺の魅力について、これまでの歴史やこれからの展望を交えて紹介します。
若者の文化の発信地・渋谷駅の基本情報
渋谷駅は東京でも特に若者に人気でにぎわいのある渋谷区にあります。
1885年の渋谷駅開業以降、複数路線の乗り入れが始まり、明治から昭和にかけて駅周辺は一気に発展しました。昭和から平成にかけては、SHIBUYA109や渋谷PARCOなどのファッションビル、タワーレコードやHMVなどの大型CDショップが誕生し、渋谷は若者のトレンド発信地となりました。「渋谷系」という言葉ができたのも平成初期の頃。渋谷から生まれたカルチャーが全世界で注目されるようになったのです。
また、駅前には有名なスクランブル交差点やハチ公像もあり、若者に加えて外国人観光客が連日多く集まります。
2022年度に国土交通省から発表された駅別乗降客数データによると、2021年の渋谷駅における平均乗降客数は1日あたり497,010人で、JR東日本では5番目に多い駅です。
出典:国土交通省 国土数値情報ダウンロードサイト「駅別乗降客数データ」
出典:統計情報リサーチ「渋谷駅(JR東日本)の乗降客数の統計」
なお、渋谷駅の平日1日あたりの混雑度は以下になります。
※JR東日本公式サイト「駅混雑状況」およびNAVITIME「混雑予報」より加工して独自に作成
※縦軸の数字により4つの混雑度に分類。非常に混雑している(200~250)、混雑している(150~200)、それほど混雑していない(100~150)、空いている(0~100)
渋谷駅周辺は飲食店や商業施設が多く、特に若者を中心に多くの人が集まります。これによって、土日祝日を中心に平日のランチ時も混雑する傾向です。また、平日週末を問わずスクランブル交差点を中心に多くの観光客が行き交います。
渋谷駅への乗り入れ路線
渋谷駅の乗り入れ路線は、全部で以下の9路線です。
JR東日本
● 埼京線・川越線
● 湘南新宿ライン
● 山手線
● 成田エクスプレス
● 相鉄線直通
地下鉄(東京メトロ)
● 銀座線
● 半蔵門線
● 副都心線
私鉄
● 京王井の頭線
● 東急東横線
● 東急田園都市線
これらの路線を使えば、東は浅草や押上(東京都)、西は吉祥寺(東京都)、南は横浜や(神奈川県)、北は宇都宮(栃木県)や高崎(群馬県)まで一直線でアクセスできます。
また、渋谷駅から徒歩15分圏内には恵比寿駅、表参道駅があります。渋谷駅に乗り入れていない東京メトロ日比谷線や千代田線を利用しやすいのもポイントです。
渋谷駅前にはバスロータリーもあり、路線バスも多く乗り入れています。新橋駅前や六本木ヒルズ、高輪ゲートウェイ駅前、五反田駅前、大崎駅前などに行く路線バスが発着します。
渋谷駅から主要駅・空港へのアクセス
渋谷駅から都内の主要駅・空港への主なアクセス方法と、所要時間を紹介します。
● 東京駅:JR山手線(外回り)で11駅
● 新宿駅:JR埼京線またはJR湘南新宿ラインで1駅
● 池袋駅:JR埼京線またはJR湘南新宿ラインで2駅
● 羽田空港(第2ターミナル):JR山手線(内回り)の浜松町駅で乗り換え、東京モノレール(羽田空港方面・空港快速)で3駅(羽田空港第2ターミナル駅)
● 成田空港(第1ターミナル):成田エクスプレス(成田空港方面・特急)で4駅(成田空港駅)
渋谷駅から直通で行ける観光地
渋谷駅からは、特急踊り子号(※)で熱海や静岡の伊東、伊豆高原、河津方面へ直通でアクセス可能です。
※土日祝日のみ渋谷駅に停車
また、渋谷駅に乗り入れる在来線を使えば、以下の観光地にも乗り換えなしでアクセスできます。
● 吉祥寺(井の頭線)
● 川越(副都心線直通東武東上線、埼京線直通川越線)
● 鎌倉(湘南新宿ライン)
● 宇都宮(湘南新宿ライン)
● 横浜(湘南新宿ライン、東横線)
● みなとみらい、元町・中華街(東横線直通みなとみらい線)
ほかにも、渋谷マークシティからは軽井沢や草津温泉、仙台、金沢、京都、大阪、神戸などへの高速バスも発着するため、観光に便利です。
渋谷発の文化は世界へ発信される影響力がある
渋谷駅周辺には渋谷ヒカリエや渋谷スクランブルスクエア、渋谷マークシティなど近年の再開発によって建設された高層ビルが密集しています。ファッションやカルチャー、グルメなどさまざまなライフスタイルを支える施設が豊富に揃っており、国際都市としての顔を持っています。
話題のカフェやスイーツショップなども駅周辺に多く存在し、トレンドにいち早く触れることができるのも渋谷駅周辺に住むメリットでしょう。コンビニやドラッグストアも多く、生活に必要なものは一通り駅周辺で揃えられることも住みやすさのひとつ。
また、電車や路線バスだけでなく、渋谷駅を中心として渋谷区を周るコミュニティバス「ハチ公バス」も定期的に運行しており、交通の便が非常に良いエリアです。
さらに、渋谷駅周辺は国際色が強いことも特徴です。2024年1月時点で、渋谷区には11,935人の外国人が住んでいます。渋谷区に大使館が点在していることや外資系企業が多いことから、渋谷エリアで働く外国人が多いことなどが、居住外国人が多い理由だと考えられます。
かつては、「ガングロ」や「ヤマンバ」などの独特な渋谷発のファッション・カルチャーが世界へと発信されました。令和時代の現在も同様で、さまざまなファッションビルが集結する渋谷からは、特に10~20代の若者向けファッションや音楽などの新しい文化が続々と誕生し、世界へ伝播しています。
ほかにも、渋谷からは原宿や代々木上原、表参道、恵比寿、代官山など、ファッション雑誌に掲載されるようなおしゃれな街にも徒歩で行きやすいのも魅力のひとつです。
このことからも、世界中から集まる人々にとって魅力的な居住地となっているのでしょう。
出典:東京都の統計「第1表区市町村別国籍・地域別外国人人口 (上位10か国・地域)」
利用者が少ない駅から東京のハブへと発展した渋谷駅
渋谷駅は、1885年に日本鉄道の品川線の駅として開業しました。当初の1日あたりの利用者は十数人と、現在の渋谷駅からは想像しがたい姿でした。こんなにも利用者が少なかったのは、渋谷駅周辺が田畑に囲まれ、住人が少なかったためだと考えられます。
渋谷が変貌を遂げ始めたのが、1909年のこと。鉄道の電化により品川線は山手線へと生まれ変わり、渋谷駅は交通のハブへと成長しました。1920年代には山手線の高架化で渋谷駅が移動し、以降は続々と路線が開業していきます。
新たな路線が乗り入れるとともに駅周辺も大きく発展し、1934年には「東横百貨店」が開業(2020年閉館)。ここは日本初の名店街「東横のれん街」や、デパ地下ブームの火付け役となった「東急フードショー」などが入った駅ビルの代表格でした。また、1970年代には渋谷の象徴ともいえるファッションビル「SHIBUYA109」、2000年代には駅直結の商業施設「渋谷マークシティ」が誕生。令和に入ってからも、駅周辺には次々と新たな高層ビルが建築されています。
2023年には、デジタルとサステナブルを重視した複合施設「渋谷サクラステージ」がオープン。渋谷の再開発に携わる東急グループは、「働く・遊ぶ・暮らす」の3要素を融合させた「渋谷型都市ライフ」を目指しています。
このように、渋谷駅とその周辺は、単なる移動の起点や終点ではなく、東京が世界に誇るダイナミズムの象徴とも表現できます。開業から現在まで、そして未来へと常に時代の最先端を走り続ける渋谷駅。その変遷は、まるで時空を超えた冒険のようです。より詳細な渋谷駅エリアの変化は、渋谷区が発信する「SHIBUA CITY RECORD」で紹介されています。
渋谷の文化や歴史を感じられる渋谷駅周辺のスポット
ファッションやカルチャーなど日本のトレンド発信の中心となり躍動感あふれる渋谷には、多彩な魅力が点在しています。先進的なものから歴史的なもの、さらには歴史を大切にしながらも新しいものとの融合を楽しめるものなど――渋谷を一層魅力的な街へと導くスポットを紹介します。
劇場を構える複合商業ビル「渋谷ヒカリエ」
2012年にオープンした渋谷ヒカリエは、オフィスや商業施設、劇場などさまざまな機能を備え、人・モノ・情報の活発なコミュニケーションを生み出す高層複合施設です。
11階に位置する大規模な劇場「東急シアターオーブ」は、照明や機材の設置に自由度があり、多様な演出に対応できるのが特徴です。舞台は客席に近く、ミュージカルの感動を深める造りとなっています。
また、寿司やうなぎなどの日本料理をはじめ、中華料理や韓国料理、イタリアンなど各国のレストランが集結し、ランチやディナーなどの時間軸にとらわれずに利用できる多様なカフェ&レストランが入ります。
都会・渋谷にたたずむパワースポット「金王八幡宮」
渋谷駅より東側にある金王八幡宮(こんのうはちまんぐう)。1092年に渋谷の地へ鎮座した、長い歴史を持つ神社です。開運や厄除け、良縁のご利益があり、珍しいところでは「渡航交通安全の神」として崇められています。
金王八幡宮の社殿は江戸時代から変わらぬ権現造り(※)で、都内でも貴重な建築のひとつです。全体的に豪華でありながら、各所に優しげな彫刻が施されています。特に、拝殿正面の左右には動物のバクとトラが彫られているのが特徴的。バクは「世の平穏」、トラは「正しいまつりごと」の祈りが込められています。
※本殿と拝殿を石の間(または相の間)幣殿で繋ぐ建築様式のこと
また、境内には一枝に一重と八重が入り混じって咲く珍しい「金王桜」が植えられています。江戸時代には、江戸三名桜のひとつとして数えられていました。春になると、多くの人々に楽しまれるお花見スポットです。
渋谷の歴史を知ることができる施設「白根記念渋谷区郷土博物館・文学館」
「白根記念渋谷区郷土博物館・文学館」では、渋谷に関する歴史・民俗・考古学などをテーマにした展示をしています。旧石器時代から現代までの渋谷の移り変わりに触れられる貴重な施設です。渋谷エリアで見つかった土器や、昭和の渋谷エリアの住宅内部の再現などが展示されています。
「ふらっと、SHIBUYAを知る。」をコンセプトに、入館料は100円(小中学生は50円)と気軽に立ち寄れるスポットです(2024年3月時点)。
公園と商業施設が一体化した「MIYASHITA PARK」
MIYASHITA PARK(ミヤシタパーク)は、渋谷駅の東側に位置する全長約330mの低層複合施設です。
屋上に移設された「渋谷区立宮下公園」と、 渋谷区内で初めて立体都市公園制度(※)を活用して誕生した商業施設「RAYARD MIYASHITA PARK」、敷地内北部にあるホテル「sequence MIYASHITA PARK」で構成されます。
※土地を有効活用するために他の施設と都市公園を一体的に整備することを認めた制度
緑の天蓋で包まれた商業施設全体からは、自然の風と緑を感じられます。RAYARD MIYASHITA PARKには、日本初出店となる7店舗や商業施設初出店32店舗など約90のショップが入居。
渋谷駅からアクセスしやすく、食事やカフェ、買い物としてだけでなく憩いの場としても利用できることから連日多くの人が訪れるスポットです。
渋谷駅の待ち合わせスポットに関する豆知識
渋谷駅周辺には、ここまで紹介してきたもの以外にも世界的に有名な観光スポットが数多くあります。その中でも特に興味深い歴史を持つのが、待ち合わせ場所としても有名な渋谷駅東口のハチ公像と西口のモヤイ像です。これらの像の歴史や意味を知れば、渋谷の街並みをより深く楽しめるでしょう。
渋谷駅前のハチ公像は実は二代目!
渋谷駅前にあるハチ公像は、実は二代目ということをご存じですか?
初代ハチ公像は1934年に設置され、除幕式には当時存命だったハチ公自身も参加したといわれています。
しかし、第二次世界大戦中の資源不足によって初代ハチ公像は1944年に金属回収の対象となり、供出されてしまいました。
戦後、ハチ公像の復活を望む声が高まり、1948年に同じ場所に二代目ハチ公が再建されました。二代目ハチ公を手がけたのは、初代ハチ公を制作した安藤照氏の長男。初代ハチ公像と父の思いを引き継いだ二代目ハチ公は、現在も渋谷駅前で多くの人を見守っています。
渋谷駅の「モヤイ像」の秘密
渋谷駅の待ち合わせスポットといえば、ハチ公像だけでなく西口の「モヤイ像」も有名です。モヤイ像とは、イースター島の「モアイ像」がモデルとなっている像のこと。
渋谷のモヤイ像は、1980年に新島村から渋谷区へ寄贈されました。「モヤイ」という名前はイースター島のモアイ像に由来するだけでなく、船を綱で繋ぎ留めることを意味する「舫う(もやう)」や、助け合うことを意味する「催合う、最合う」などの意味も持ちます。
ところで、このモヤイ像は新島村の東京都移管100年を記念して贈られたものですが、なぜ渋谷区なのでしょうか。これは渋谷区の青少年センター(2019年に閉鎖)が新島村にあることから、渋谷区と新島村で一層交流を深めることが目的だったといわれています。
まとめ
若者のファッション・カルチャー発信の中心地として、今も昔も価値を発揮し続けている渋谷駅エリア。近年は“100年に一度の再開発”として、駅周辺を中心に高層ビルが次々とオープンし、オフィス・グルメ・ショッピングの利便性もより高まっています。
渋谷駅開業当初の人がまばらな時代からは打って変わって、通勤・通学以外にも観光で訪れる人々が多く集まり、今後も話題の尽きないエリアとなりそうです。一方で、新しいビルだけでなく一歩裏に入ると渋谷の歴史を体感できる神社や文化館などのスポットもあり、渋谷駅エリアの魅力は尽きません。
渋谷駅周辺の不動産購入を検討されている方は、本記事で紹介した渋谷駅の利便性や駅周辺の住みやすさなども、ぜひ参考にしてください。