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日本の不動産売買における「源泉徴収」について

台湾をはじめ、外国人が日本で不動産を売買する際に発生する「源泉徴収(げんせんちょうしゅう)」。
日本では国籍や居住地、所有するビザの種類等に関わらず、外国人であっても土地や建物の売買、贈与、相続など、不動産に関する取引を行うことが可能です。
こうした不動産取引の際に重要なキーワードとなるのが「源泉徴収」です。
ここでは、日本の源泉徴収のしくみについてご紹介します。

「源泉徴収」とは

「源泉徴収」とは所得税の一種で、日本では収入にかかる所得税を雇い主が給与や賞与、報酬からあらかじめ差し引いて本人の代わりに国に納付します。
この給与や賞与、報酬から天引きして納税する仕組みが「源泉徴収制度」です。会社や協同組合、学校、官公庁など、対象となる支払い者を「源泉徴収義務者」と呼び、基本的には事業を行う団体はすべて源泉徴収を行う義務があります。

所得税は所得(利益)に対して課税するため、単に外国人が日本の不動産を「所有」しているだけでは所得税は発生せず、源泉徴収の義務はありません。
不動産を賃貸して「不動産所得」が発生する場合や、不動産を売却して「譲渡所得」が発生する場合において所得税が課税され、源泉徴収の義務が生じます。

台湾の事業所得税にも同様の仕組みがあり、台湾所得税法第92条によると、「中華民国の領土内に居住していない個人、または中華民国に固定の事業所を持たない営利企業」が源泉徴収の対象となります。中華民国の場合、第88条に規定されている各種の事業所得税が課せられます。源泉徴収義務者は、所得を受け取った際に、源泉徴収日から10 日以内に源泉徴収税を国に納付し、納税証明書を発行する義務があります。
実際に海外の個人や法人から所得税を受け取るためには、国内の納税者が事前に政府に税金を納める必要があり、日本の不動産の所有者が「外国人」である場合、その不動産の賃貸料や売却額に対して、「源泉税」をあらかじめ日本政府に納める必要があるのです。


不動産に関して、「外国人居住者」に対する源泉税は以下のように定められています。

【不動産を借りる場合】

貸主が非居住者(日本に拠点を置いていない、あるいは居住期間1年未満)で、賃借人が営利目的で賃貸を行う法人の場合、賃借人は「源泉徴収義務者」となり、賃貸収入に20.42%の源泉徴収税が課されます。
賃借人が個人で、自己または親族の居住用として借りる場合は、源泉徴収は不要です。

【不動産を売却する場合】

非居住者が不動産を売却する場合は、売却代金から10.21%相当額の源泉徴収税を税務署に支払う義務があります。
非居住者に支払われる金額は、支払金額の89.79%相当額となり、源泉徴収した10.21%相当額については、不動産の購入者が支払いをした翌月10日までに税務署に納付することになります。売却した非居住者は、確定申告をすることで源泉徴収された金額が精算され、納付すべき税額に対して超過分が還付されます。
不動産の売買金額が1億円以下で、かつ、購入した個人が自己又はその親族の居住の用に供するためのものである場合には、源泉徴収の必要はありません。

外国人が日本で不動産の売買を行う際は、税務に関する正しい知識を持ち、適切な手続きを行うことが重要であり、税務や不動産取引専門家のサポートへご相談することをおすすめします。