ひと言で「着物」といっても種類が多く、それぞれ格式の高さが異なります。洋装と同じように、TPOにそぐわない着物を着てしまうと、マナー違反と思われてしまうことも。
今回は、基本的な着物の種類と「格」について解説します。
【正礼装(第一礼装)】
一般的に、着物は「正礼装(第一礼装)」、「準礼装」、「外出着」、「普段着」の4つの格に区分されます。
正礼装(第一礼装)とは、最も格式が高く、式典や冠婚葬祭などのフォーマルなシーンで着用される着物を指します。
●打掛(うちかけ)…江戸時代から花嫁衣装として着用されてきた「打掛」は、真っ白な白無垢と、鮮やかな色打掛の2種類があります。小袖の上に羽織ることからその名が付けられました。
●黒紋付(くろもんつき)…光沢のない黒地の着物で、背中と両胸、両袖に紋が入った「五つ紋(いつつもん)」が特徴です。女性は弔事の際の正礼装として用います。
●黒留袖(くろとめそで)…既婚女性の正礼装とされている着物で、裾のみに柄が入り一枚のようにつながって見える「絵羽模様(えばもよう)」が特徴。主に結婚式で新郎新婦の母親や仲人夫人が着用します。
●振袖(ふりそで)…未婚女性が着る着物のなかで最も格が高く、「振り」と呼ばれる長い袖が特徴です。袖の長さの違いで「大振袖」、「中振袖」、「小振袖」に分けられ、成人式や結婚式で多く用いられます。
【準礼装(略式礼装)】
「準礼装(略式礼装)とは、セミフォーマルな場で着用する着物のこと。結婚式の付添い人や法事、七五三などが挙げられます。
●色留袖(いろとめそで)…地色が黒以外の色で染められた留袖で、既婚・未婚を問わずに着ることができます。紋の数によって格が変わり、 五つ紋を入れると「第一礼装」、三つ紋なら「準礼装」になり、活躍の場が広がります。
●訪問着(ほうもんぎ)…既婚・未婚を問わずに着用できる着物で、肩から裾にかけて全体的に絵羽模様が施され、華やかな印象です。
一つ紋を付けることでよりフォーマルな装いに、紋を付けなければカジュアルなシーンでも着用できるようになります。
●付け下げ(つけさげ)…訪問着を簡略した「付け下げ」は、見た目は訪問着によく似ています。
柄が縫い目にかからないよう配置されているのが特徴ですが、最近は多様化していて区別がつきにくいため、模様の格・豪華さで着分ける必要があるでしょう。
合わせる帯や小物に応じて格が変化します。
●色無地(いろむじ)…文字通り、黒以外の一色に染められた柄のない着物のこと。比較的カジュアルなシーンで着用されますが、付け下げ同様に、合わせる帯や小物に応じて格が変化します。
【外出着(盛装)】
お茶会や食事会、観劇など、特別におしゃれをしてお出かけをしたい日には「外出着(盛装)」を選びます。
●小紋…「小紋(こもん)」とは、全体に文様が繰り返されている型染めの着物のこと。柄によって「江戸小紋」「京小紋」などが存在し、模様や柄の種類が豊富な点も特徴的です。柄によってはややフォーマルな場面でも着用できます。
●付け下げ小紋…「小紋」と「付け下げ小紋」の違いは、すべての模様が上を向いていること。格式としては「付け下げ」と「小紋」の中間に位置します。
●御召(おめし)…「御召縮緬(おめしちりめん)の略」で、御召糸という糸を使って織られています。染めと織りの中間的な性質をもつため、織りの着物のなかでは最も格が高いとされています。
【普段着】
日常使いの着物には、お手入れがしやすい「普段着」がぴったり。
●紬(つむぎ)…織りの着物の代表で、節のある紬糸を使って織りあげています。かつては普段着とされていましたが、現代ではカジュアルな外出着としても用いられるようになりました。
●木綿(もめん)・ウール…安価で丈夫、家庭でも気軽に洗濯ができるのが特徴。普段着の代表格です。
●浴衣(ゆかた)…もっともカジュアルな浴衣は、現代において、最も多くの人に親しまれている着物のひとつ。語源は「湯帷子(ゆかたびら)」で、江戸時代には湯上りに羽織るものでした。現代は夏祭りや花火大会など、夏のカジュアルな外出着としても用いられています。
まとめ
ここでは代表的な着物の種類と「格」についてご紹介しましたが、模様の選び方、帯との組み合わせ方によって格が変化することもしばしば。
TPOに合わせた着こなしに迷われたら、お近くの呉服店に相談することをおすすめします。