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縄文時代から受け継がれる、竹細工・竹工芸の文化。未来に受け継がれる竹素材の魅力とは

しなやかで軽く、耐久性に優れているなどの特性を持つ竹は、私たちの生活にとってなくてはならない植物の一つ。竹を割り、細く削った「竹ひご」を組み合わせ、さまざまな形に編み上げるかごやざるをはじめ、縄文時代からさまざまな暮らしの道具として用いられてきました

知っているようで知らない、竹素材の特徴

竹は東南アジアを中心に生育する植物で、日本国内ではごく一部の地域を除き、幅広い地域に竹林が存在します。ひと言で竹といってもさまざまな種類があり、世界に約1,200種、日本国内でも600種を超える品種が生育しているのだとか。

特に竹細工・竹工芸に多く用いられるのは、マダケ、モウソウチク、ハチクなどの種類。春先にこれらの竹の若芽であるタケノコが、青果店やスーパーなどの店頭に並ぶのを目にしたことがある人もいるのではないでしょうか。

種類によって特性は異なりますが、竹素材ならではの魅力についてご紹介します。

◇成長が早い

一般的に、木材として植えた樹木は伐採できるまでに数十年かかりますが、竹は1日に1メートル伸びるほど成長が早く、約3年で伐採が可能に。また、地下茎があるため、一度伐採しても繰り返し収穫することが可能です。

◇軽量である

竹は空洞部分が多いため、木材よりもはるかに軽量です。また、中の空洞を生かして、「尺八(しゃくはち)」や「笙(しょう)」などの和楽器の素材としても用いられてきました。

◇丈夫である

竹の内側には「維管束鞘(いかんそくしょう)」と呼ばれる細くて丈夫な繊維があり、とくに表皮に近いほど繊維の密度が高くなっているため、力を加えても簡単には折れにくい性質があります。だからこそ、他の樹木より細く、空洞が多くても、強風や自重などに耐え、倒れることなくまっすぐ伸びることができるのです。
こうした特性を活かし、「梯子」や「物干し竿」、強度を求められる生活道具や家具類、また、“しなり”の強さを活用して、「釣竿」や「弓」、「傘の骨」などにも用いられてきました。

梯子

◇ 割裂性が高い

繊維が縦方向に組み込まれていることから、竹は縦に割りやすい性質があります。この性質を活かして生まれたのが、「竹箸」や、竹を縦に細く割った“竹ひご”です。竹ひごの汎用性は高く、「かご」や「ざる」、「すだれ」、「茶筅」などさまざまな竹製品が作られています。

ざる

すだれ

茶筅

かご

◇抗菌作用がある

昔から竹には高い抗菌作用があるとされ、「竹職人は水虫にならない」といわれてきました。実際に、竹に含まれる成分からは、水虫(白癬菌)に対する抗菌物質が発見されています。
また、日本には、旅に出る際に竹の皮でおむすびを包み、竹の水筒に水を入れて持参する風習がありますが、これは竹の鮮度保持能力や、抗菌作用を利用した知恵であったといえるでしょう。

◇環境に優しい素材である

世界的に「脱プラスチック」が進む近年、プラスチックの代替品として竹が注目を集めています。先ほどもご紹介しましたが、竹は短期間で急成長し、一度植えたら植え替えが不要。適切に管理された竹林は、CO2の吸収や、土壌保全などにも貢献します。さらに成長した竹は軽くて丈夫で、さまざまな製品に加工しやすい。
まさにサステナブルな素材といえるでしょう。すでにプラスチック製のストローやスプーン、ホテルのアメニティをはじめ、繊維類、鉄、セメントなど建築素材の代替素材としても使われています。

まとめ

平安時代に成立したとされる『竹取物語』(かぐや姫)は、竹の中から生まれたお姫様の物語。かぐや姫を見つけたのは、竹を採って売ることで生計を立てていた貧しいおじいさんでした。この物語の背景からも、古くから一般庶民の暮らしに竹がなくてはならない存在だったことが想像できます。
現代では、適正に管理されず放置されてしまった「放置竹林」が社会問題になる一方で、サステナブルな素材としての竹の可能性にも注目が集まっています。今後はさまざまな竹製品の素材としてはもちろんのこと、環境配慮型の素材としての研究や活用もますます広がるのではないでしょうか。