(株)不動産流通研究所は21日、2023年度上期の「不動産流通各社の仲介実績調査」の結果を公表した。不動産流通業界の動向を探る目的で、半期ごとに行なっているもの。主要不動産流通各社にアンケートを送付し、23社から回答を得た。(下に一覧表)
23社中、手数料収入を増やしたのは14社。そのうち2ケタ増は3社にとどまった。取扱件数を減少させた会社は14社と過半で、特に郊外部では需要が落ち着き始めたというコメントが多く聞かれた。
トップの三井不動産リアルティグループは取扱件数が減少したものの、都心部での取扱単価の上昇と旺盛な需要に支えられ手数料収入は前年同期並みをキープした。2位の東急リバブル(株)は、4~6月は苦戦したものの7~9月に入ると「住宅が売りに出たら高値でもすぐに成約する」というほどの都心の需要と価格上昇が業績をけん引。法人仲介での大型案件獲得もあり、上期末時点でトップの三井リアルに肉薄した。3位の住友不動産販売(株)は、店舗配置の調整を行なっている関係もあり、取扱件数が減少。続く野村不動産ソリューションズ(株)は都心高級物件専門店の「レアリア」など都心部の需要が業績をけん引した。
当期は、価格上昇による恩恵を受けた会社が多かった。価格上昇が続く都心エリアでは、富裕層や投資家層の需要が依然として活発。新築マンションの価格高騰を受け、価格のこなれた既存マンションに需要が流れている。都心エリアでは、「いま都心で動いているユーザーは、住宅ローン金利の変動の影響を受けない層。まだしばらく活況が続くのでは」という見方をする会社が多い。
また郊外エリア、特に個人仲介の分野では市場の潮目が変わったという声も。実需中心の需要が価格上昇によって弱まっている一方で、売り主は高値売却を志向しているため、そのギャップによって成約期間が長期化する傾向にあるという。各社からは「売却相談は増えているが、売り手の売却価格目線は依然として高い。半面、購入希望は減ってきており、在庫も増えてきている。特に郊外では、新築戸建ての売れ残りも増えており、流通価格の下落にもつながっている」(京王不動産(株))、「郊外エリアを中心に市況の鈍化がみられた。買い情報が減少し、コロナ前の水準に戻りつつある」(小田急不動産(株))など、特に郊外エリアを得意とする会社から懸念の声が聞かれた。
法人仲介に関しては、三菱地所リアルエステートサービス(株)の手数料収入が約6割増となったほか、野村不動産ソリューションズでも法人仲介は手数料収入・取扱件数・取扱高がいずれも増加するなど、全般的に好調に推移した。
下期に向けての鍵は、価格上昇だという会社は多い。東急リバブル代表取締役社長の太田陽一氏は、「価格上昇が行き過ぎてしまうと、買い手の動きが一気に鈍化してしまう。ほどよい状況で高値をキープできるのが望まれる」と話す。
◆主要不動産流通各社の2023年度上期仲介実績
※三井不動産リアルティグループの手数料収入は、売買仲介・賃貸仲介、賃貸管理収益などを含む仲介セグメントの収益。東急リバブルの手数料収入は賃貸仲介および賃貸関連収益を含む。住友不動産販売、三菱地所ハウスネットの手数料収入は賃貸仲介含む。東京建物不動産販売と住友林業ホームサービスは23年12月期上期、積水ハウスグループは24年1月期上期、ほかは24年3月期上期の数値。 ※増減は前年同期比
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