不動産の賃貸契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があります。
ここでは「普通借家契約」と「定期借家契約」の違いや、貸主(オーナー・大家)にとってのメリット、デメリットをご紹介します。
普通借家契約とは
「普通借家契約」とは、一般的な不動産賃貸で利用される賃貸借契約のことを指します。
1年以上の契約期間が設けられていて、多くの場合2年間で設定されています。
期間満了後も、借主が希望をすれば契約の更新が可能で、「解約の告知期間」、「直ちに解約する場合に支払う金銭の額」など、あらかじめ定められた特約を守れば、借主は自由に中途解約することができます。
普通借家契約の場合、正当な理由がない限り、貸主から一方的に解約することや、契約期間終了時の更新を拒絶することはできません。
定期借家契約とは
「定期借家契約」とは、2001年(平成12年)3月に借地借家法が改正され、「良質な賃貸住宅などの供給の促進に関する特別措置法」(国土交通省)に基づいて、優良な賃貸住宅を供給されやすくなることを目的に導入された制度で、あらかじめ契約期間が決められている賃貸借契約です。
「普通借家契約」では契約期間を1年未満に設定することはできませんが、「定期借家契約」の場合は1年未満の契約が可能です。
基本的に契約更新がないため、借主は期間満了後には退去しなくてはなりません。
貸主と借主の双方が合意すれば、期間満了後に「再契約」ができるだけでなく、「普通借家契約」の更新とは違って賃料を上げるなど契約内容を変更することも可能です。
定期借家契約のメリット・デメリット
貸主にとって「定期借家契約」には様々なメリットがあります
●貸し出す期間を自分で決められる
・転勤のため、一時的に持ち家を貸し出したい
・別荘やセカンドハウスを、利用しない期間(オフシーズン)だけ貸し出したい
・両親が暮らしていた家を貸し出したい
・将来的に建て替えや取り壊しが決まっている物件を貸し出したい
上記のように、特定の期間だけ物件を貸し出すことができるのは「定期借家契約」の大きなメリットの一つです。
契約期間を1年未満と短期間でも設定できるので、効率的に収益を得ることができます。
●期間満了時に必ず退去してもらえる
「定期借家契約」は契約時に「期間が満了したら退去する」ことを書面と口頭で伝えているため、正当な事由の有無に関係なく、期間満了時には立ち退き料を支払うことなく明け渡しを求めることが可能です。
●家賃減額請求の特約を排除できる
普通借家契約においては借主が強く保護されているため、予め契約書に「賃料は減額しない」等の特約を記載していたとしても、借主が物件の老朽化などを理由に「賃料減額請求」を求めることが可能です。
一方、定期借家契約では賃料改定に関する特約が有効となり、借主はいかなる場合であっても賃料の減額請求ができません。
そのため、貸主にとっては賃料増減によるトラブルを防ぐと同時に、安定的に収益を得ることが可能です。
【デメリット】
一方で、いくつかのデメリットや注意点もあります。
●書面による説明が必要
普通借家契約の場合、「口頭での契約」も可とされていますが、定期借家契約においては「公正証書等の書面による契約」が定められています。
そのため、貸主は契約の際に必ず「期間満了とともに契約が終了する」ことを、契約書とは別の書面によって、借主へ明確に伝えなければなりません。
要件を満たさないと「定期賃貸借契約」が「普通建物賃貸借契約」となってしまうため、注意しましょう。
また、期間が1年以上の契約について、貸主は期間満了の1年前から6か月前の間(通知期間)に、借主に対して終了通知を行う必要があります。
●相場よりも賃料が安くなりがち
定期借家契約は借主にとって不利な条件も多いため、通常の相場賃料で募集をしても契約が決まりにくいケースも。
そのため、相場よりも5~10%程度低い賃料を設定されることが一般的です。
●中途解約ができない
定期借家契約において、原則として貸主側からの中途解約はできません。
中途解約を希望する場合には、当初の段階で中途解約の特約を入れておく必要があります。
●「定期借家契約」が「普通借家契約」とみなされてしまうことがある
貸主と借主の合意のもとで再度の定期借家契約をすることは、法的に禁じられるものではありませんが、同じ借り主と定期借家契約の再契約を繰り返している場合、実質的に「普通借家契約」と同じであるとみなされる可能性があります。
そのため、貸主が望む期間で契約を終えることができないことも考えられ、後々のトラブルを防ぐためにもあまりおすすめはできません。
【定期建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約の違いの一覧】
普通借家契約を定期借家契約に切り替えることはできる?
「物件の老朽化による建て替え」などの理由で、普通借家契約から定期借家契約へ切り替えたい場合は、借主に事情を説明し、合意の上で普通借家契約を終了させ、定期借家契約を新たに結ぶ必要があります。
ただし、借主との交渉がうまくいかない場合、貸主側から強制的に契約を切り替えることはできません。
場合によっては借主から立ち退き料を請求される可能性があるだけでなく、それでもうまくいかなければ裁判手続による解決になることもあるため、きちんと話し合うことが重要です。
まとめ
定期借家契約は、「決まった期間だけ物件を貸し出したい」と考える貸主にとってはメリットが多い契約です。
デメリットも把握したうえで検討してみてはいかがでしょうか。