お茶は人々の生活になくてはならない存在。
日本と同様に、台湾でもお茶は人々の生活になくてはならない存在。
台湾旅行中に茶藝館などで台湾茶をいただき、その味に感動した人も多いのではないでしょうか。
日本茶も台湾茶も、原料は同じチャノキですが、製法に大きな違いがあります。
今回は、そんな日本茶と台湾茶の違いについてご紹介します。
原料は全てチャノキ
日本でもおなじみの緑茶、烏龍茶、紅茶。これらの原料はすべてチャノキと呼ばれる植物、ツバキ科ツバキ属の常緑樹「カメリア・シネンシス」です。
茶葉を摘んですぐに加熱処理をした「緑茶」(不発酵茶)、半分程度発酵させた「烏龍茶」、完全に発酵させた「紅茶」の大きく3つに分けられていて、品種や栽培方法、製造方法などによって個性豊かなお茶が生み出されました。
「日本茶」といえば、日本の食文化に欠かせない緑茶を指します。最も多く飲まれている「煎茶」や最高級品「玉露」をはじめ、「かぶせ茶」「抹茶」「玉緑茶(ぐり茶)」「茎茶」「芽茶」「番茶」「ほうじ茶」など、同じチャノキでも、使用する部位や製法によって分類されます。
「台湾茶」とは文字通り、台湾で生産されたお茶のこと。亜熱帯に位置する台湾は、1年を通して温暖で、茶の木の栽培に適しており、全域で栽培されています。
烏龍茶や緑茶、紅茶など多彩なお茶が生産されていますが、最も多いのは半発酵の烏龍茶。そのおいしさ、品質の高さは世界的にも有名です。中でも「凍頂烏龍(とうちょううーろん)」、「文山包種(ぶんさんほうしゅ)」、「木柵鉄観音(もくさくてっかんのん)」、「東方美人(とうほうびじん)」の4種は“台湾四大銘茶”として広く知られています。
【台湾四大銘茶】
凍頂烏龍……台湾を代表するお茶で、凍頂山の山間部で作られています。緑がかった金色の水色(お茶の液体の色)、花のような香りと甘みが特徴です。
文山包種……台湾北部の文山地区で作られる烏龍茶で、茶葉を紙に包んで販売していたことから”包種”と付けられました。台湾茶の中でも最も発酵度が低く、そのため水色は緑茶のように淡いグリーン。すっきりとした爽やかな味わいです。
木柵鉄観音……ドライフルーツ、ナッツを思わせる香りや香ばしさがあり、奥行きのある味わい。やや発酵度が高く、水色は茶色がかっています。
東方美人…… 「ウンカ」と呼ばれる虫が噛んで汁を吸った葉を使用して作るお茶で、比較的発酵度が高く、紅茶に近い味わい。熟したフルーツや蜜のような甘い香りが特徴とされています。
日本茶(煎茶)と烏龍茶の製法の違い
日本茶、台湾茶ともにお茶の種類や生産者によって製法は異なりますが、ここでは一般的な日本茶(煎茶)と烏龍茶の製法をご紹介します。
発酵の有無以外にも、茶の葉を摘む段階から大きく違っていることがわかります。
【日本茶の(煎茶)の一般的な製法】
1. 摘採(収穫)
産地によって異なりますが4月下旬~5月にかけて新芽を摘み取ります。
芯と、その下の2枚の葉の部分を「一芯二葉(いっしんによう)」といいます。
一般的に、手摘みの場合は「一芯二~三葉」、機械摘みの場合は「一芯四~五葉」のごく柔らかい葉を摘採します。
新茶や玉露などの最上級茶葉は一芯二葉、続く上級茶葉は二葉、大衆的な量産品は四葉、五葉で作られます。
また、煎茶を摘採した後のやや硬い茶葉を摘採、加工したものが「番茶」となります。
2. 送風・加湿
摘採した茶葉はまだ生きており、そのままにしておくと熱を持ち、ただちに発酵がはじまります。そのため、湿度の高い風を当てることで鮮度を保持し、品質劣化を防ぎます。
3. 蒸熱(じょうねつ)
蒸気で蒸すことで、酸化酵素の働きを止め、茶葉の色を緑色に保たせながら青臭みを取り除きます。
製茶の中でも最も重要な工程と言われており、蒸し時間によって「味・香り・水色」が決まります。
4. 粗揉(そじゅう)
茶葉は揉むことでうま味成分が抽出しやすくなるため、適度な圧力をかけて揉みながら、熱風を当てて乾かします。
5. 揉捻(じゅうねん)
葉と茎の水分量が均一になるよう、熱を当てずに圧力をかけて揉みます。
6. 中揉(ちゅうじゅう)
茶葉に再び乾燥した熱風を送りながら打圧を加えて揉みます。
茶葉の水分を揉み出しながら“撚れ形”を付けます。
7. 精揉(せいじゅう)
茶葉に熱と圧力を加え、形を整えながら内部の水分を取り除いて乾燥させます。
人間が手で揉むように一定方向に転がすように揉むことで、煎茶特有の針のような形に仕上げます。
8.乾燥
茶葉を熱風乾燥で水分含有量を5~6%程度まで下げます。
これによって長期保存ができるようになり、この状態を「荒茶(あらちゃ)」といいます。
【烏龍茶の一般的な製法】
1. 摘採(収穫)
日本とは異なり、芽が若いと苦みが強くなるため、出来るだけ芽が出開くのを待って収穫します。
2.日干萎凋(晒青/しゃいちん)
晴天時に日に当てて干し、手摘みした茶の葉をしおれさせます。
曇天時は萎凋槽(いしゅうそう)と呼ばれる場所で熱風を当ててしおれさせますが、一般に天日に当てて干したものが品質が良いとされています。
3.室内萎凋(涼青/りゃんちん)
日干萎凋を進めることで温度が上がった茶葉を室内の棚に静置して冷やします。
4. 回転発酵(搖青/やうちん)
発酵を促進するため、竹かごの中に茶葉を入れて回転させ、葉の周辺に傷をつけます。
5. 釜炒り(殺青/しゃーちん)
発酵の頃合いを見て釜で炒り、酸化酵素の活性を止めます。
6.揉捻
日本のお茶と同様に、揉捻機に茶葉を入れ上から圧力をかけて茶葉を揉みます。茶葉の水分を均一化させ、茶葉の成分を抽出しやすくします。
7. 締め揉み(包揉/パオロウ)
風呂敷などの布で茶葉を包み、転がすようにしぼりながら茶葉を締めて形を整えます。
8.乾燥
きつく締めた茶葉の塊をほぐし、 葉の形が元に戻ってしまわないよう、じっくり乾燥させます。7、8の工程を20~30回繰り返し、乾燥させると「荒茶」の完成です。
まとめ
日本茶も台湾茶も、「荒茶」は茶問屋など専門業者に出荷され、茶葉の選別や整形をはじめ、それぞれの茶に適した方法で仕上げられます。
台湾にはお茶の“香りを聞く”文化があり、「聞香杯(もんこうはい)」など独自の茶道具を使って楽しむ方法もありますが、一般家庭では茶こし付きマグカップなどで手軽に楽しむ人も多いのだとか。
ただし、どのお茶も、使用する茶葉の量やお湯の温度など、お茶の種類によって美味しく淹れる方法が異なるため、まずはパッケージなどに書かれた淹れ方に従って楽しむことをおすすめします。