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秋の日本酒「ひやおろし」で、お月見を

日本では古来より、秋の収穫を神々に感謝し、月を愛でながらお酒を酌み交わす「月祀り(つきまつり)」が行われてきました。これが「お月見」のはじまりです。

月を見ながら楽しむお酒は「月見酒」と呼ばれる

秋ならではの日本酒「ひやおろし」

もともとは中国から9世紀頃に伝わり、江戸時代以降に庶民の間にも広まったといわれています。
現代では「月見酒」は秋の季語として俳句にも詠まれているほか、2017年には中秋の名月にあたる旧暦8月15日は「月見酒の日」にも制定されました。
2024年の中秋の名月は9月17日。今年は、秋ならではの日本酒「ひやおろし」で月見酒を楽しみませんか?

ひと夏かけてゆるやかに熟成させた「ひやおろし」

秋を知らせる日本酒「ひやおろし」。“ひや“という言葉から、「冷やした状態で出荷する」「冷やして飲む」という印象を抱きますが、日本酒における“ひや”は常温のお酒を指す言葉です。

「ひやおろし」が誕生したのは江戸時代にさかのぼります。
一般的な日本酒は、劣化を防ぐために、貯蔵前と出荷する前、2度にわたって「火入れ」と呼ばれる加熱処理を行います。一方、「ひやおろし」が火入れ行うのは春先、貯蔵前の1度だけ。冬に搾った新酒をひと夏かけて熟成させ、外気と貯蔵庫の中の温度が同じくらいになる9月頃に「ひや(=常温)」で「卸す(=出荷する)」ことからその名が付いたといわれています。

作り手や出荷時期によってさまざまな個性がありますが、春から秋までゆっくり熟成されることで角がとれ、まろやかな丸みを帯びた味わいが特徴です。火入れの回数が少ないため、美味しく飲める期間が、一般的な日本酒は瓶詰めから1年とされているのに対して、ひやおろしは7~8か月とやや短め。封を開けたら、美味しい内に飲み切りましょう。

時季によって異なる「ひやおろし」の味わいを飲み比べよう

同じひやおろしでも、出荷時期によって「夏越し(なごし)酒」、「秋出し一番酒」、「晩秋旨酒(ばんしゅううまざけ)」の大きく3種類に分けられます。
■夏越し酒
9月頃に出回るひやおろしを「夏越し酒」と呼びます。
爽やかさもあり、過ぎゆく夏を惜しみたくなるようなフレッシュで軽快な味わい。
まだ日中は暑さが残る時期ですから、常温のほか、冷酒やシャーベット状の「みぞれ酒」もおすすめです。

■秋出し一番酒
「秋出し一番酒」は、秋が深まる10月頃に出荷されるひやおろし。熟成が増し、円熟した香り、旨みのバランスが絶妙です。
常温、燗酒、どちらでも楽しめますが、おすすめは「ぬる燗(40℃前後)」や「人肌燗(35℃前後)」。ぜひ温度によって変わる香りや味わいを飲み比べてみてください。

■晩秋旨酒
秋の終わりに近づく(晩秋)11月頃に出荷される「晩秋旨酒」は、ひやおろしの中でも最も濃厚で香り高く、しっかりとした味わい。
そろそろ燗酒が恋しくなる季節、“ぬる燗”や“上燗(45℃前後)“で、おでんや鍋料理を楽しんではいかがでしょうか。

お鍋と共にぬる燗で飲む日本酒もおいしい

まとめ

ところで「お月見」の習慣があるのは日本だけではありません。
台湾では旧暦8月15日は「中秋節(ちゅうしゅうせつ)」として、秋の収穫をお祝いします。伝統的菓子「月餅(げっぺい)」や大ぶりの柑橘「文旦(ぶんたん)」を食べたり、BBQを楽しんだりしているそう。

この季節に台湾や中国で楽しまれる伝統的菓子「月餅(げっぺい)」

大ぶりの柑橘「文旦(ぶんたん)」

また、韓国では「秋夕(チュンソ)」、ベトナムでは「節中秋(テットチュントゥ)」と呼ばれるなど、アジアを中心に根付いているようです。
気温が低くなり、大気中の湿度が下がる秋は、空気の透明度が高く、月がくっきり美しく見える日が多くなります。中秋の名月以外にも、2024年10月17日は、地球から最も近い位置で満月を迎える「スーパームーン」が見られるかもしれません。秋の夜長は、お気に入りの「ひやおろし」を片手にのんびりとお月見をお楽しみください。

韓国では「秋夕(チュンソ)」と呼ばれる

ベトナムでは「節中秋(テットチュントゥ)」と呼ばれる