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あなたはいくつ知っている?四季を彩る日本の伝統色

日本には、古来より伝わる特有の「伝統色」を呼ばれる色があります。
日本ならではの豊かな自然や、四季折々に表情を変える空や山の色などから生まれたと考えられており、その数は1100以上。
「赤系」だけでも「海棠色(かいどういろ)」や、「紅葉色(もみじいろ)」など植物に由来するものや、「鴇色(ときいろ)」をはじめとする身近な動物に見られる色、「御所染(ごしょぞめ)」や「唐紅(からくれない)」など染物から生まれた色、「薔薇色(ばらいろ)」のように西洋から渡来した色など多岐にわたります。
この記事では、日本人がどのように伝統色を取り入れてきたのかご紹介します。

身分を定める色「冠位十二階」

603年、聖徳太子は身分を分ける制度「冠位十二階(かんいじゅうにかい)」を制定しました。家柄や身分ではなく個人の能力によって役職を与えるという制度で、目で見て位がわかるよう、冠の色によって区別されました。
位は徳・仁・礼・信・義・智とし、それぞれ大小に分けられました。使用する色は黒・白・黄・赤・青・紫の濃淡で分けられ、最上位である「大徳」には「濃紫(こき)」と呼ばれる深い紫色の冠が与えられました。
当時は紫色の染め物は希少価値が高かったことから、「紫」が最も高貴な色とされたといわれています。

「禁色」と「絶対禁色」、「赦色」について

聖徳太子が治めていた飛鳥時代から平安時代頃まで、染料を大量に使う濃色は「禁色(きんじき)」として、庶民が身に着けることが許されていませんでした。

一方、誰でも身に着けることを許されていたのが「赦色・聴色(ゆるしいろ)」と呼ばれる淡い色の数々。現在は主に、紅花を使って染めた淡いピンク色「一斤染(いっこんぞめ)」が赦色として知られています。

もう一つ、日本人と色の関係を語る上で外せないのが、「絶対禁色(ぜったいきんじき)」です。
現代にも受け継がれる伝統色の文化で、天皇陛下のみが身に着けることを許されている「黄櫨染(こうろぜん)」、皇太子のみが着ることができる「黄丹(おうに)」などがあります。
「黄櫨染」は山櫨(やまはぜ)の樹皮や蘇芳(すおう)の芯材などから染め上げた、着色味がかった茶色で、嵯峨天皇時代から用いられている色。技術が進んだ現代においても、優れた職人でも美しく染めるのが難しいといわれています。
一方、「黄丹」は、支子(くちなし)の下染めに紅花を重ねることで表現した鮮やかな橙色(だいだいいろ)。聖徳太子が「日出処」と表した、太陽を象徴する色です。
「即位礼正殿の儀」をはじめ、皇室において大切な行事の際に着用されているので、メディアを通して目にする機会もあるかもしれません。

暮らしの中にある、さまざまな日本の伝統色

ここではごく一部ですが、身近な伝統色をご紹介します。

・群青色(ぐんじょういろ)
絵の具でもおなじみの群青色は紫がかった深い青色のこと。もともとは瑠璃(ラピスラズリ)を原料に作られていましたが、高価なため藍銅鉱(アズライト)から作られています。

・紺色(こんいろ)
藍を原料とする染物の中でも最も深く濃い色で、やや赤みを含んだ濃い青色。古い時代には「深縹(こきはなだ)」と呼ばれ、平安時代の式目「延喜式(えんぎしき)」にもその名が見られます。
日本人にとっては広く親しまれた色で、江戸時代には染物屋を総称して「紺屋(こんや、こうや)と呼んでいました。古典落語にも「紺屋高尾」という演目があります。

台湾オリジナル友禅カードケースカラーでも使われている「紺色」

台湾オリジナル友禅カードケースカラーでも使われている「朱色」

・浅葱色(あさぎいろ)
葱の葉を薄めたように見えることからその名が付けられましたが、原料はネギではなく藍。
幕末時代に活躍した新選組がまとっていた羽織の色としてもおなじみ。

・藤色(ふじいろ)
藤の花に由来する色で、青みがかった紫色で、ムラサキという植物の根から抽出した染料で染めます。藤は平安貴族にも愛された花で、万葉集にも数多く登場します。上品な藤色は着物にも用いられてきました。

・朱色(しゅいろ)
黄みがかった鮮やかな赤色で、縄文時代から存在した色です。
魔除けや厄除けの力があると信じられ、宮廷や神社仏閣などでよく用いられてきました。

・茜色(あかねいろ)
茜という植物の根で染めた、黒みがかった赤色のこと。和歌などでは夕焼けを表す色として用いられてきました。

あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る(額田王)

・桜色(さくらいろ)
文字通り、桜の花に由来する赤みを含んだ淡い紅色のこと。
桜に由来する色はほかにも桜色にやや灰色がかった「灰桜(はいざくら)」、桜色に薄墨がかった「桜鼠(さくらねずみ)」があり、古くから日本人にとって桜に思いを寄せていたことがよくわかります。

・菜の花色(なのはないろ)
こちらも文字通り、菜の花のような明るい黄色のこと。
菜の花から絞った油「菜種油」に由来する「菜種油色(なたねあぶらいろ)」も存在しており、江戸時代には大流行したのだとか。

・銀鼠色(ぎんねずいろ)
江戸時代中期以降、幕府は「奢侈禁止令(しゃしきんしれい)」を発布し、庶民が身に着ける色を規制しました。
そんな中でもおしゃれを楽しみたいと、江戸っ子たちは元々暗い色として敬遠していた灰色、茶色などに注目。「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」が誕生しました。
青みがかった明るい灰色である「銀鼠色」はその一つで、粋な色として流行したといわれています。
ほかにも、「鈍色(にびいろ)」、「鉛色(なまりいろ)」、「利休鼠(りきゅうねずみ)」、「梅鼠(うめねず)」など微妙に染め分けした灰色や茶色のバリエーションが生まれました。

まとめ

日本の伝統色について知れば知るほど、日本人の色彩感覚の豊かさを思わせます。
現在も、アパレル用品やネイルカラー、企業のコーポレートカラー、工業デザインなどさまざまな場所で日本の伝統色は使われています。
気になる色を見つけたら、その色の名前や歴史を調べると、ますます色に対する興味が湧いてきそうです。