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四季折々の薬湯 ~湯船で感じる日本の季節~

日本には、季節ごとの植物や果実を湯に浮かべる「薬湯」の文化があります。
昔から健康を願うと同時に、自然の香りや色で四季を楽しむ風習として受け継がれてきました。
それぞれの湯にどんな効能があるのか、季節ごとにご紹介いたします。

春:新しい芽吹きを感じる湯

菖蒲湯(しょうぶゆ)
●いつ? 5月5日(端午の節句)
●どんな湯? 菖蒲の葉をお湯に浮かべます。香りには邪気を払う力があるとされ、健康を願う風習です。
●効能: 血行促進、疲労回復、リラックス効果。菖蒲の香りが体を温め、ストレスを和らげます。
●豆知識: 菖蒲湯に入ると「1年間病気に勝つ」と言われ、特に子どもの健康祈願として大切にされてきました。

菖蒲湯(しょうぶ湯)

よもぎ湯に使われるよもぎ

よもぎ湯
●いつ? 3月~5月
●どんな湯? 春の若々しいよもぎを湯に浮かべます。柔らかな香りが春らしさを感じさせてくれます。
●効能: 血行促進、冷え性の改善、肌荒れ防止。女性特有の不調を和らげる効果も期待されています。
●豆知識: よもぎは「ハーブの女王」とも呼ばれ、海外ではお茶やアロマにも活用されています。

夏:涼やかな香りに癒される湯

桃の葉湯
●いつ? 6月~8月
●どんな湯? 桃の葉を湯に浮かべると、さっぱりした香りが広がります。
●効能: 肌荒れの改善、あせもの予防、保湿効果。夏の疲れを癒し、リフレッシュさせてくれます。
●豆知識: 桃は魔除けとしても知られ、ひな祭りの象徴でもあります。

さっぱりした香りの「桃の葉湯」

森林浴の様な香りが漂う「笹湯」

笹湯
●いつ? 7月~8月
●どんな湯? 笹の葉をたっぷり浮かべたお湯は、清涼感たっぷり。
●効能: 抗菌作用、肌の清潔を保つ効果、気分転換。香りが疲れた心を癒します。
●豆知識: 笹湯に使う葉は熊笹などが一般的で、森林浴のような香りを楽しめます。

秋:香り豊かな収穫の湯

菊湯
●いつ? 9月9日(重陽の節句)
●どんな湯? 菊の花を湯に浮かべると、優雅な香りが漂います。
●効能: リラックス効果、肌の調子を整える作用、邪気払い。菊には心を穏やかにする成分が含まれています。
●豆知識: 重陽の節句では、菊の花を酒に浮かべて飲む「菊酒」の風習もあります。

優雅な香りが漂う「菊湯」

みかんの爽やかな香りが広がる「ミカンの皮湯」

ミカンの皮湯(陳皮湯)
●いつ? 10月~1月
●どんな湯? 乾燥させたミカンの皮を浮かべます。爽やかな香りが特徴的です。
●効能: 血行促進、冷え性の改善、疲労回復。柑橘系の香りが心をリフレッシュさせます。
●豆知識: 生の皮を使うと香りが一層引き立ち、湯上り後の肌がしっとりします。

冬:体を芯から温める湯

柚子湯
●いつ? 12月22日頃(冬至)
●どんな湯? 丸ごとの柚子を浮かべた湯は、香りもビタミンもたっぷり。
●効能: 冷え性改善、血行促進、風邪予防。ビタミンCが肌を整え、リラックス効果も抜群です。
●豆知識: 冬至に柚子湯に入ると「次の夏まで風邪をひかない」と言われています。

柚子の香りでリラックスする「柚子湯」

ぽかぽか温まる「生姜湯」

生姜湯
●いつ? 11月~2月
●どんな湯? 生姜のすりおろしをガーゼに包んで湯に浮かべます。ぽかぽかと体が温まります。
●効能: 冷え性改善、免疫力向上、血行促進。体の芯から温めてくれるので、寒い冬にぴったり。
●豆知識: 生姜湯は飲むことでさらに効果が高まり、体を内外から温めてくれます。

松葉湯
●いつ? 12月~3月
●どんな湯? 松葉を浮かべた湯は、爽やかな香りが広がります。
●効能: 肌の引き締め、血行促進、リフレッシュ効果。不眠の解消にも効果があると言われています。
●豆知識: 松の香りはアロマ効果があり、森林浴をしているような気分になります。

森林浴をしているような気分になる「松葉湯」

自宅だけでなく銭湯や温泉でも季節ごとに薬湯を楽しむことができます

湯船に浮かべて楽しむ、季節のお風呂

薬湯は、季節の植物や果実を湯に浮かべることで、自然の恵みを肌で感じる日本ならではの文化です。
香りや効能に包まれながら、四季折々の風情を楽しむのは、何とも贅沢なひととき。
次にお風呂に入るとき、少しだけ手間をかけて薬湯を試してみてはいかがでしょう?
きっと心も体も温まり、日々の疲れが溶けていくはずです。