注文住宅の建築には、地盤調査が必要です。土地の固さは見た目では分からないため、家を建てる前に調べておかないと地盤沈下による家の傾きや地震による倒壊など大きな被害につながりかねません。
地盤調査は法令で義務化されており、住宅の新築や増築、建て替えの際は必ず行うように定められています。
本記事では注文住宅の地盤調査を詳しく知りたい方に向けて、地盤調査の流れや費用など知っていると役立つ情報をまとめています。
地盤調査の概要
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地盤調査とは、地盤の強度や硬さなどに問題がないかを確認するための調査です。土地に問題があるまま家を建ててしまうと、地盤沈下や地震による家屋の傾き・倒壊の恐れがあります。このため、家を建てる前に地盤の強さを調べなければなりません。
地盤調査は、土地を契約してから行うのが一般的です。万が一、問題のある土地と分かった場合は地盤改良が必要になるため、自分のできる範囲で地盤に問題ないかを確認しておくとよいでしょう。
具体的には、該当エリアのハザードマップを確かめる、現地に赴いて土地の高低差や周辺に湿地がないか見ておく、などが挙げられます。
地盤調査は法律上の義務!気になる罰則は?
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地盤調査は、建築基準法で義務づけられた調査です。1995年に起きた阪神淡路大震災を契機に法改正が行われ、2000年から義務となりました。
日本は地震が多い国のため、地盤の弱い土地に家を建てると液状化や家屋倒壊の恐れがあります。なるべく安全な家を建てるためにも、地盤調査の実施が重要です。
地盤調査をしなくても、法的な罰則はありません。ただし、着工許可が出ない、工事停止命令が入る可能性がある、保険加入を断られるなどのリスクは生じます。
安全な住まいづくりのためにも、地盤調査は必ず行ってください。
地盤調査における代表的な3つの試験方法
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地盤調査は、土地の使用目的に応じてさまざまな方法が用いられます。注文住宅の地盤調査でよく使われるのが、次の3点です。
1.SWS試験(スクリューウエイト貫入試験)
2.SDS試験(スクリュードライバーサウンディング試験)
3.ボーリング調査(標準貫入試験)
SWS試験とSDS試験は木造住宅に多い調査方法で、ボーリング調査はRCや鉄骨造の際によく採用される調査方法です。
ここでは、各地盤調査の特徴やメリット・デメリット、費用などを解説します。
1.SWS試験(スクリューウエイト貫入試験)
SWS試験は一戸建て住宅によく用いられる調査方法で、費用は10万円前後かかります。
ドリルに重りをつけて地中を掘り、回転数で土地の固さを確かめます。低コストで行えるうえに、調査にかかる時間も数時間で済む点がメリットです。
SWS試験は地耐力を手軽に確かめられるため、多くの調査会社が取り入れています。ただし、土質までは確認できません。
2.SDS試験(スクリュードライバーサウンディング試験)
SDS試験はSWS試験を高精度に改良した調査方法で、SWS試験との併用が一般的です。費用は、10万円前後かかります。
SDS試験では、重りによる加重だけではなく回す力も測定します。そのため、SWS試験だけでは難しかった土質の把握も可能です。
3.ボーリング調査(標準貫入試験)
ボーリング調査は、大型建築から一戸建てまで幅広く用いられる調査方法です。費用は20〜30万円程度かかります。(道路付けや対象の土地の状態によって費用は前後します。)
調査手順は、以下の通りです。
1. 地上面に矢倉を組む
2. 直下に鋼管を沈めながら掘り進める
3. 掘った土を採取する
4. 採取した土で土質を調査する
作業は早くて1日で終わりますが、大規模な建築物なら数日かかるケースもあります。
ボーリング調査を行うには調査機器が大掛かりなため、5m四方程度の広さが必要です。また、SWS試験より時間とコストがかかる点も把握しておきましょう。
地盤調査で問題があった場合の対処方法と費用
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地盤調査で問題が発覚したら、地盤改良を行わなければなりません。地盤改良は、地盤に問題のある個所によって工法が変わります。主な工法は、次の3つです。
● 地表から2mくらいまで「表層改良工法」
● 地表から2~8mくらいまで「柱状改良工法」
● 地表から5~10mくらいまで「鋼管杭工法」
表層改良工法が最も安価で、目安として坪単価1〜2万円です。柱状改良工法は重量のある建物になるほど高額で、目安は坪単価2〜3万円かかります。
鋼管杭工法はほかの工法が使えない場合に用いる工法で、坪単価4〜6万かかるケースもあります。
※道路付けや土地の状態によって異なってくるため、あくまでも目安となります。
知っていれば役立つ!地盤調査の費用を抑える2つの方法
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地盤調査の費用を抑える方法として、次の2点が挙げられます。
1. 地盤の強固な土地を選ぶ
2. 国土交通省の資料で土地の状態を確認する
少しでもコストを下げたい方は、ここで紹介する方法を参考にしてください。
1.地盤の強固な土地を選ぶ
土地選びでは、実際に自分の目で見て地盤が強固そうな土地を選びましょう。施工会社の担当者と一緒に確認するとより安心です。
標高が高いエリアは、一般的に固い地盤とされています。反対に標高・海抜が低いエリアの場合、昔は河川や海の一部だった可能性もあるため注意が必要です。
周囲に川や池がある場所や水田地帯は埋め立てなどで地盤が脆弱な可能性があります。地名に川や沼など水関連の漢字が使われている場合も、同様の理由で地盤が弱いかもしれません。
2.国土交通省の資料で土地の状態を確認する
土地の固さは見た目だけでは分かりません。そのため、自治体の資料も確認しておくと安心です。
国土交通省による国土地盤情報検索サイト「KuniJiban」では、ボーリングデータや土質試験結果など多くの情報が閲覧できます。また、「国土地理院」では、国土の旧地図や活断層図なども公開されています。
まとめ
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地震や津波、台風など自然災害の多い日本で家を建てるなら、「地盤調査」は必須です。地盤調査には罰則こそありませんが法律上の義務であり、費用と時間をかけてでも行わなければならない調査といえます。
安全な住まいと快適な暮らしを手に入れるためにも、注文住宅を建てる前には必ず地盤調査を行いましょう。